5/36
706人が本棚に入れています
本棚に追加
/285ページ
──俊介の誘拐事件と、咲楽の失踪には何か繋がりがあるのだろうか……。 今回の事件とは何ら関係のない過去の誘拐事件ではあるが、どちらも未解決だ。 それに、なんだか気になる……。 「しかし、如月さんもよく考えたよね。優衣香さんを咲楽さんに仕立て上げようなんて。普通なら性別が違うってだけで断念しそうだけどね」 緒方がそう言ってソファに踏ん反り返った。 野本が武士になるソファで、のびのびとくつろいでいる緒方を見ると、彩香はふっと笑う。 「結果、性同一性障害の診断書を出したり、戸籍の手続する前に折原さんに会えて良かったんじゃない?犯罪に手を染める一歩手前……」言いかけて、 「いや、もう染めてたか」と、天井に視線を向けた。 全てが公になれば、優衣香を誘拐したとして俊介も罪に問われるが、今はそれを咎める者はいない。それが唯一の救いか。 しばらくして玄関のベルが鳴ると、夕飯の準備をしていた登季子さんがキッチンからパタパタとスリッパの音を響かせながら「はーい」と、返事をして玄関へ向かった。 「来たかな?」 緒方もソワソワしながら玄関の方を窺っている。 男性の声が聞こえた後、スリッパの音が響き、こちらの方へ近づいてきた。 「彩香さん、お客様がお見えですよ」 登季子さんが自分より頭二つ分くらい身長の高い二人の男性を連れて部屋に入って来ると、彩香と緒方は立ち上がる。
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!