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「彩香さん……」 かすれる声で言った後、彩香の右手をギュッと握る。 「私…先生に会いたいの……」 心の叫びだったのかもしれない。 また、大粒の涙を流しながら彩香の胸に顔を押し付け、声を押し殺した。 彩香が慰めるように髪を撫でても、今は俊介じゃないとダメなのかもしれない……。 救いを求めるように野本の顔を見ると、野本は隣に立っている堂本と小声で話し始める。どんなやり取りがされているのかは分からないが、その後、野本と五十嵐は部屋から出て行った。 しばらくは登季子さんが夕飯の支度をする音が部屋に響いていた。 堂本とそらは部屋中を回って歩き、問題が無いかの確認をすると同時に、部屋の間取りなどを確認していた。 優衣香は相変わらず、泣き止むことはない。 今まで堪えてきたものが決壊してしまったのかもしれない。 俊介に会えない今、より感情を抑えられなくなっているようだ。 彩香の胸に抱き着いた優衣香は、それからしばらく顔を上げることは無かった。
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