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「ちなみに泰三にはもう一人娘がいます。磯島(いそじま)紗代(さよ)、29歳。佳奈の三つ上の姉です。紗代は大学入学と同時に家を出て、市内で一人暮らしをしており、現在は行政書士として働いてます」 「妹がアパレルショップで、姉はお堅い行政書士ですか。お姉さんはどうやら父親が嫌いのようですねぇ」 緒方がつぶやくと、五十嵐が首を傾げる。 「なんでそう思うんですか?」と、訊けば、 「大学入学と同時に家を出てるんでしょ?同じ市内に家を構えてるのに一人暮らしを始めたってことは、父親からの干渉を嫌ってたと考えられるし、行政書士という仕事に就いたのも、父親への反発心からだと思うけどね」 単純に緒方の勝手な思い込みだが、政治家とその子供というのは、依存するか嫌厭するかのいずれかのような気がしていた。その考えで行けば、離れようとするならそれは嫌厭している…と、思うのが普通だろう。
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