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野本の考えていることは何となく分かっていても、俊介の気持ちも理解できる。 引き離されるくらいなら、共に地獄の底まで落ちてしまおう……そんな覚悟さえ、俊介にはあったのかもしれない。 「彼女は未成年です。自供して父親に無理強いされた事が分かれば、父親の元へ帰されることはありません。父親の罪が明らかになれば、もっと安全になる」 そう言われても、俊介は目を細めたまま、野本の言葉を信じなかった。 「むしろ、父親の罪が明らかにならなければ、あなたも優衣香ちゃんも安心して生きられる場所など無いんです」 野本の真剣な眼差しを見て、優衣香は一度目を伏せ、俊介の手を握った。 「私…行きます」 小さく、かすれる声でそう言うと、俊介は優衣香に視線を向け、より強く肩を抱く。 「俊ちゃ……」言いかけて、また目を伏せると、 「先生……」と、呼び直す。 「私…先生を守りたいの。先生が私を守ってくれたみたいに、私も先生を守りたい……。このまま怯えながら生きていくなんて…嫌だよ」
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