1 プロローグ

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1 プロローグ

「コケコッコー!」  ペンギンなのに鶏の鳴き声を真似たのは、早起き長兄のダロイ。彼は毎朝、みんなを起こす係を担っている。  人里から少し離れた所にあるその森には、太陽から零れ落ちた光るサンストーンが散らばり、豊かに草花が茂る。昼は木漏れ日が差し、夜は燈火の代わりにサンストーンが優しい熱を発するのだ。  棲みついているのは鳥や栗鼠などの小動物と、人の両手に収まるくらいのペンギン妖精たち。彼らは人間の手に乗る大きさなのでテノリペンギンと呼ばれ、短い手足を動かしてちょこちょこ歩き回ることもあるため、チョコチョコペンギンだとも言われて人々から愛されている。  森には妖精たちの家が点在し、木製の三角屋根の家に五人兄弟のペンギンたちが住む。 「さあ起きろ、兄弟たち。一日の始まりだ!」  ダロイは窓のカーテンを勢い良くシャッと開け、眠っている弟たちに容赦なく朝日を浴びせる。  寝室は両側に二段ベッド、窓側に一台が置かれている。窓側のベッドが長兄ダロイの寝床で、両側にダロイの四人の弟たちがふかふかの布団に包まって眠っている。  ダロイの次に、むくりと起き上がったのは次男のロウサスであった。 「ダロイ、もうちょっと優雅に起こしてくれないかな」  次にむくりと起き上がるのは三男で、 「いてて、寝違えちゃった」  と首を痛めたマガンダ。 「お腹空いた」  と、これは末っ子のサム。 「ぐうう……」 「何だ? 腹の虫の音か?」  ダロイは末っ子のサムが発した音だと思って訊くのだが。 「違うよ、トゥービグの寝息だよ」 「ぐうぐう……」  と、兄弟四人が起きたのに、一人まだ夢の中にいるのは四男のペンギン、名はトゥービグという。朝日は彼の目覚ましにはならない。 「表、裏、白、黒……。うーん、むにゃむにゃ……」 「寝言か。こいつは一体、何の夢を見てるんだ」  ダロイたち上の三人の兄たちは首を傾げる。 「もう、起きて、トゥービグ兄ちゃん! こちょこちょこちょ……!」  サムはトゥービグの全身をくすぐった。 「うひゃひゃ……! はっ?」  トゥービグは起き上がった。
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