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「あれは、お婆ちゃんから貰った甘露飴。なかなか噛み砕けないものよ」
水面に静かな波紋を広げて飴玉は浮いていたが、すぐに四方八方から寄ってきた魚たちに食いつかれる。棘がある鰭と牙を持つその魚は獰猛で、飴玉に齧りつきバリバリボリボリと貪る。
「な、何なのあの魚は? 恐ろしい食べっぷり!」
トゥービグは驚き、サムは言葉を失う。
「あれはね、獰猛なムサボリピラニアなの」
メイカは再び飴玉を池に放り投げる。すると次は水面に落ちる前の宙に舞った飴玉を、水中から跳び上がった魚がパクリと食べた。飴玉がバリバリボリボリと噛み砕かれる音が響く。
「ご覧の通り、ムサボリピラニアがいるから池の真ん中に咲いてる蓮の花に近づけない。噛まれたら骨の髄まで食べられちゃう」
「あわわ……」
トゥービグはガタガタ震える。どうしよう、メイカちゃんの課題を手伝おうとしたけど、あんなに獰猛な魚がいる池には入れないよ。
動けないトゥービグに対して、何とサムが一歩踏み出した。
「よ、ようし。僕が囮になってムサボリピラニアを引きつけるから、その間に蓮の実を採ってきたらいいよ」
弟の大胆な行動に、トゥービグは驚く。
「サ、サム! お前は正気か? 寝惚けてないか?」
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