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「酷い奴だと思った?」
私は首を横に振る。当たり前の反応だと思ったから。ずっと長い事いじめられてきた君が、その恐怖に勝つのは大変な事だ。勝つと言うか、打ち克つと言うべきかもしれない。
「ごめんね。本当にごめんね」
君は泣きそうな顔で謝る。私の腕は傷だらけで、見えないところは痣だらけで。
それでも君が傷付かないならそれでいいと思えた。
「この事は忘れないから」
こぼれそうな涙を溜めたままの君に、私は首を横に振る。忘れていいよ、と。
覚えていてほしくない。きっと罪の意識は消えず、体よりも深い傷を心に刻むだろうから。だから私が覚えている。
絶対に、忘れたりなんてしない。
薄暗くなってきた校舎の中で二人分の影が、闇に溶けていく。どうか、君の罪も溶けてなくなってほしいと願った。
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