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そんな事が卒業まで続いた。いや、だんだんと君と視線が合う回数は減っていった。それでいいと思った。
君はきっと忘れるだろう、いや、もう忘れているのかもしれない。何せ十年も前の話だ、覚えている必要なんて君にはない。一緒に過ごした楽しかった日々も、君が少しずつ変わっていった日々も、遠く忘却してほしい。罪の意識とともに、どこかに葬り去っていてほしい。
ただ私が忘れないだけだ。
あの放課後、君がいじめの主犯に脅されて私の腕に傷をつけた日。君が泣きそうで泣かなかった事を、その傷を悔いてくれた事を、私は今も忘れない。
うっすらと残る傷を見ては思い返し、自分を肯定する糧にしてきた。
君と私のまばゆい思い出は、今もこの傷の中にある。
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