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できれば父の夢を叶えたい。父と開発したスイーツの類もおおよそ作れる。しかし、店の経営や接客となるといきなり初心者の自分がやっても良いものだろうか。そう思い悩んでしまう。
やるからには店を潰したくない。けれど自信がない。
こう思い悩む姿を妹には見せたくなくて、一人ここで考える。
ここは神社に近いせいか、居るだけでとても落ち着く。
ただ、思考だけはメビウスの輪のように終着点がなく、同じところを回り続けているだけだった。
そうやってどれだけの時間を過ごしていただろうか。コーヒーもすっかり冷めたころ、がらりと戸が開く音がして、慶一郎は頭をあげた。
音がしてようやく気付くくらい深く没頭していた。
「あ」
妹かと焦ったが違った。
見知らぬ少年が立っていた。
……少年だと思う。しかし、見様によっては女の子にも見える。
しかし、どうにも異質だ。着物にしては随分と奇抜なデザインだし、赤い色が鳥居の朱を思わせる。その上、肩にカラスを乗せている姿はどう受け取ればいいのかわからない。
何よりその人は美しかった。その容姿は女性としても男性としても美しい以外の形容詞が見当たらない。
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