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見た目、15歳前後にしか見えないが、それはとても子どものする表情ではなかった。長い黒髪をたなびかせ、凛とした表情でまっすぐと慶一郎を見据える。そしてその美しさが何よりこちらが震え上がるくらい圧巻だった。
クールビューティーとはこういうことだろう。慶一郎は何となくそう思った。もしかしたら、背の高さだけで年齢を判断してはいけないのかもしれない。慶一郎は立ち上がり、少年に失礼のないように姿勢を正した。
「あの……」
外には暖簾もオープンの札もない。店の屋号だって張り出していないはずだ。
「ここはまだ……」
「のどが渇いた」
その人は抑揚のない機械のような声でそう告げた。それがまた、男女の境をあいまいにして、ミステリアスなオーラを醸し出している。
「ここは黒い飲み物を扱うと聞いて来た」
コーヒーのことだろうか?
「……不思議な香りがする。私の知らない香り。……それをいただく」
やはりコーヒーのことらしい。しかし……。
「すみません。ここはまだオープンしていないんです」
その事実を慶一郎が告げると、彼は不思議そうに首をかしげる。
「ここでその飲み物があるときいた」
「失礼ですが、どちらで伺ったのですか」
「お前の父親だ」
その言葉に素直に驚いた。父はすでに営業活動をしていたというのだろうか?
「父はすでに……」
「亡くなっているのは知っている」
「それならなぜ……」
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