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千波は屋上で写真を撮っていた。
屋上のドアが開く音がしたが、千波は振り返らなかった。
「天羽さんは、俺が小鳥遊裕也の子供だって知ってたの?」
「いや、前に見たことがある記事に小鳥遊って名前があったなぁと思っただけ。それにあんたが何か抱えてるなんてすぐわかってたし。」
「どうして?」
「わざわざ遠い傍島高校にくるような奴は、なんとなく面白そうって理由で来る馬鹿か、何か抱えてる奴だけでしょ?王子様が虚像だってことが何よりの証拠。」
「君も後者なんでしょ?」
小鳥遊は千波が何かを抱えてると薄々感じていた。
「いや、この島を撮りたいから。つまり私は馬鹿ってこと。」
千波はきっぱりと言い放ち、去っていった。
小鳥遊はその言葉が嘘なのか、真実なのかわからなかった。
なぜあの男子が小鳥遊を陥れるようなことをしたのかは、簡単な理由だった。
小鳥遊に告白して振られた娘に片思いをしていて、彼女を振って悲しませた小鳥遊を許さないと思ったから。
平穏を取り戻した教室で小鳥遊は千波の言葉を思い出していた。
『嘘は嘘のまま』
千波の発する言葉には力があった。
そして本心を悟ることができない。
人との間に鉄壁を築く千波のことを皆、"鉄壁の魔女"と呼んでいた。
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