傍嶌(かたじま)

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青い海に青い空、そして崖。 カシャ、カシャ・・・ 天羽 千波は断崖絶壁で一心不乱にカメラのシャッターを切り続けていた。 ここは傍嶌島という離島の断崖絶壁で、本当は立ち入り禁止だ。 千波はそんなことお構いなしに毎日ここに来てはカメラを構える。 立ち入り禁止のおかげで誰も来ることはない。 何にも縛られることなく写真が撮れる。それだけが千波をここに居させる理由だ。 そして一心不乱にシャッターを切り続けていた千波は、もう日が暮れてきていることに気づいた。紺色と赤色が混ざる空を撮り寮の門限が迫っていることに気づき、カメラを下した。 千波の通う高校は傍嶌島にある唯一の高校、傍嶌高校。 傍嶌高校は、地元の高校生も通うし、近くの島の子もフェリーを使って登校してる。 それだけでなく、寮整備の整ったこの高校には全国各地この高校に来る人もいる。 千波もその一人だ。窮屈な東京で中学まで暮らし、高校でこの島に来た。 カメラ好きの千波にとってこの島は、心惹かれる景色がたくさんあって、天国みたいだ。 門限ギリギリに寮に着き、食堂で食事をして、風呂に入って、部屋に戻った。 「おかえり。いい写真は撮れた?」 「まぁ。」 ここの寮は二人部屋で学年の違う人と相部屋になる。 私は二年の有澤 茉莉先輩と相部屋になった。 私は机の上のノートパソコンを開き、さっき撮った写真をパソコンに移し、細々とやっているブログにアップした。 「綺麗・・・。ほんと千波って写真撮るのうまいよね。」 「この島が綺麗なだけです。撮影者の腕なんて正直関係ないですよ。」 いつも通り、学校でくだらない授業を受けて、放課後はカメラを持ってあの断崖絶壁に行き、寮に帰ってきてブログに写真をアップして、宿題をしてベッドに入った。 image=510036977.jpg
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