傍嶌(かたじま)

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学校で無駄な授業を七時間も受け、放課後になるとさっさと教室を出ていく千波。 誰にも邪魔されないあの場所へと千波は急いだ。 いつも通り崖の上に立つと、穏やかで透き通った青い海と青い空が広がっている。 カシャ…カシャ… 「なんか飽きたな…。」 正直昨日と変わらない穏やかな海を撮り続けるのは、千波にはつまらなかった。 千波はもう帰ろうと思い、カメラを下した。 ただ何となくぶらぶらしてから帰ろうと思い、遠回りしたらある家の前に名前も知らない一輪の紫の花があった。 千波はその花に引き寄せられた。あぁ、撮りたい…その思いが千波の心の中を占拠して、千波はその花に向かってカメラを構えた。 カシャ、カシャ… 「何してる。」 千波の耳に低い声が響いた。 声のする方を向くと、そこには髭を生やした40代ぐらいの男性がいた。 千波は瞬時にこの男性はこの家の人だと思った。 「勝手にすみません。この花、撮ってもいいですか。」 千波はとりあえず許可をもらおうと思った。 「別に構わねぇよ。」 その言葉を聞いた千波は撮影を再開した。 「お前、カメラは好きか。」 突然声を変えられ何を聞かれたのか一瞬わからなかったが、一泊遅れて頭が回り始めた。「好きです。」 「どうして。」 千波は理由を聞かれて困った。だって今まで考えたことなんてなかった。 でも千波はなぜかこの人の質問には答えなきゃいけない気がして頭をフル回転させた。 「この小さな四角い世界だけが誰にも干渉されない、私だけの世界だから。」 そうだ、幼いころから愛そうともしない親に干渉され続けていた千波はただ純粋に自分だけの世界を求めた。 千波はふと男性の方を見ると、男性が驚いているように見えた。 どうしてこの人は驚いているんだろうと思った瞬間、 「お前名前は?」 と男性が声を出した。 「天羽 千波。」 男性は一瞬さっきよりも驚いた顔をしてすぐに元の顔に戻した。 しかし千波は男性が驚いた顔をしたことを見逃さなかった。 千波がどうして驚いた顔をするのか聞く前に、 「写真見せてみろ」 と男性が発した。 千波はすんなりとカメラを男性に渡すと、男性は鋭い目つきで写真を見た。すると男性は 「アングルって日本語で何だ?」 と謎の質問を出した。 「視点。」 「確かに辞書にはそう載ってるな。でもカメラを構える者にとっては"自分だけの世界"って意味なんだ。」
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