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それから数日傍嶌の天候は変わらず晴天だったため、千波はあの立ち入り禁止の崖から写真を撮ることに飽きてあの崖で10分ほどしか写真を撮らなくなっていった。
その代わり、島をぶらぶらして違う景色に見とれていた。
しかし今日は朝からどんよりとした曇り空。
千波は海の様子が今日は違うかもしれないと心躍らせた。
いい写真が撮れたら、矢野さんの所にでも行ってみようか、と千波は図々しく考えていた。
「今日は雨が降るからさっさと帰れよ。フェリー組はもしかしたら船が出ないかもしれないから、そん時は学校に戻って来いよー。じゃあ、解散。」
千波は田所先生の話なんていつもは全く聞かないくせに、雨が降るといわれ心を躍らせた。
海が荒れる、千波はここ数日待ち望んでいたのだ。この日を。
千波があの崖に着いた頃には、小雨が降っていた。
昨日まで穏やかだった海はうねりをあげていた。
千波はカメラを構えた。
カシャ、カシャ、カシャ…
だんだんと雨は激しくなり、波は崖や岩に撃ち付け飛沫をあげる。
一応カバンの中には折り畳み傘が入っているが、興奮している千波は傘を差そうともしない。
荒れ狂う海、これが千波が傍嶌で一番心惹かれた景色だった。
心にそっと寄り添ってくるような穏やかな海も好きだったが、何かを壊そうとするような荒れ狂う海が千波は一番好きだったのだ。
そのままこんな腐った世界を壊してしまえ、千波は興奮した心でそう願った。
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