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世界は、材料で満ちていた。
偶然と必然が融けあい、流転する、終りのない川に身を任せて、×××は、自身の似姿を造り続けていた。
似姿たちは、また新たな似姿を造り、それを繰り返すことで、川の流れが絶えることはなかった。
幾多の×××の一つが、ふと、似姿ではないものを造ろうと思い立った。幸いにも材料は豊富だ。望むままに、如何なるものでも造り出せる。
せっかくだから、自身とは似ても似つかぬものを造ろう。
そうして造られたのは、微小で柔らかい粒だった。×××の掌で、拠り所を求めて彷徨う。×××は粒の出来に満足したが、粒はやがて動かなくなった。
悲しんだ×××は、再び粒を造ると、今度は粒を守る檻を編んだ。粒が動きをやめないように、檻には様々な仕掛けを施した。
十全な檻の中で、粒は自由に動き回る。しばらくすると粒は、まるで親を真似るかのように、自分の似姿を造り始めた。次々と数を増やす粒は、引かれ合うように合体し、その粒の集まりがまた、別の粒の集まりを造る。連綿と繰り返される生産に合わせて、檻の様相も少しずつ変わってゆく。
もはや粒とは呼べないほど雄大に動くそれは、共存を放棄し、それぞれの道を歩み始める。ある者は合体を繰り返し、またある者は他者を食した。
活発に動く者、際立って大きい者、強かな者、×××の檻は、いつしか多様性に満ちていた。
その中で、檻の仕掛けを紐解く者が現れた。自身がどのように造り出され、自身で何を造り出せるのか、答えの出ない問いを好む者。
彼らは、檻の中に在りながら、檻の外の世界を思案した。
やがて、檻の外では生きられないと学んだ彼らは、より頑丈な似姿を作り出した。どのような場所でも生きられる、完全な存在を造ると、檻の変化に適応できない不完全な存在は淘汰された。
小さな粒が、数多の共存と競争を経て完全な存在を造り出し、それがまた完全な存在を造る。そんな繰り返しを見守るうち、全ての親である×××は、檻の中に檻の外を視た。
自分は何故ここにいるのか、この世界は一体何なのか、全てを悟った×××は、再び大いなる川の流れへと集束していったーー
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