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-システムチェック起動中-
チェック開始
メモリーユニット:グリーン
バイタルチェック:グリーン
AEFエンジン:グリーン
メモリーストレージ:91.526%
温度センサー起動
MUT起動
制御システム起動
PRセットアップ
システム:オールグリーン
-起動準備完了-
楕円形の格納器が開き、旧式アンドロイドS-JDL1500は起動を開始した。
『接続プラグを外してください』
格納器の音声案内に従い、S-JDL1500は、鋼鉄の腕で背中のプラグを引き抜く。
『接続を解除しました。本日7月10日のスケジュールを表示します』
プロジェクターで投影されたスケジュールを確認すると、S-JDL1500は房のドアロックを解除し、外に出た。
午前10時。気温摂氏22度。快晴。
暗褐色のプレーリー土に規則正しい足跡をつけながら、アンドロイドは乾季のサバンナを進んでいく。
タンザニアの広大な平原地帯であるセレンゲティ国立公園には、人類が滅亡した後にも147種の哺乳類が生息している。S-JDL1500の“仕事”は、この地域の維持だ。
3.6キロ先にヌーの群れを確認すると、アンドロイドは一定の距離を保ちながら、群れの進行方向と速さを測定する。
野生動物は、一年を通して同じ場所に留まることがない。100万頭のヌーの群れが、草原を駆け抜け川を渡る大移動が始まると、ライオンやハイエナたちも後を追うように拠点を移していく。
ヌーの群れがマラ川を越えた8時間後、ライオンのコロニーが、日没とともに川を横切る。
猩々緋の空に、草木と獣の影が揺らめく一瞬は、S-JDL1500のお気に入りだ。
隣接するマサイマラ国立公園へと移ったライオンを確認し、S-JDL1500は房に帰った。
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