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おまけ~神様たちの話~
慶一郎からもらったクッキーを片手に朔は姉の部屋を訪れた。
「姉上」
声をかけても、彼女は顔を上げない。
時を同じくして生まれた姉は自分と同じ顔をしている。黒く長い髪に赤い装束を着せられている。
曰く、趣味ではないらしい。……いや、彼女にセンスがあるのか、朔は知らない。とりあえず世話係に言われたものを着て、食べて、世話係の言う通りに神としての仕事を全うしている。
姉がそんな人であることは百も承知なので、朔は勝手に部屋に入った。
「姉上、姉上。わしは今日も楽しかったのじゃ!……のう、姉上もたまにはともに行かぬか?」
子どものように無邪気に騒ぐと、やっと姉は顔を上げた。
「お前はまた、そのような姿をしているのだな」
「ふむ?これか。人の姿じゃ。似あっておるじゃろう?」
「……一部の神々はあまり快く思っていないようだ」
「では姉上はどう思っておるのじゃ?」
そう尋ねると、姉はかぶりを振った。
「何も思わんが」
「そうじゃったなぁ」
この神は心がない。私心を持たない。
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