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かつて、男装して弟と対立し、感情で動いて、神の世界に大騒動を起こした女神である。けれど、今はそれを反省したのか、結果何かを感じる心を切り離してしまった。
感情がないゆえに今では完璧に神と人の世界をすべからく公平に、残酷に、無慈悲に治め上げて見せる。
それがこの神の国を支配する姉、天照大神だった。
朔は部屋を見回す。
幸い口うるさい世話係は席を外しているようだ。
「のう、姉上。わしは人の子のように見えるだろう」
「……一般的にその背丈の人間が使う言葉遣いではないと思うが」
「そうかのう?」
神社にいた人の口調をまねたのだが、いささか個性的だったことに朔は気づいていない。
「しかし、慶一郎は何も言わぬ」
「……」
「何も言わぬし、わしのことを特に問いただそうともせぬ。あれはわしに感謝しているのじゃ」
「……だからなんだ?」
「……姉上はそれでよいのかや?」
朔はそれがほんの少しそれが心に引っかかっている。
「わしは少し騙しているようで、心が痛いのう……」
「では行くのをやめたらどうだ?」
姉はあくまでも冷たい。
「そのようなことできるか。あそこには旨いものがあるのじゃ!コーヒーに抹茶アイス。これをな、交互に食べるのはとても……ふむ」
その感想を言おうとして、結局のところ神である朔には表現する言葉が足りなかった。
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