24人が本棚に入れています
本棚に追加
「面白いのじゃ。熱いのと、冷たいの。苦いのと甘いのと苦いのと。口の中がいっぱいになる」
「そうか……」
「姉上もわかるであろう?」
「今の私は何とも思わない」
「……むぅ、姉上は冷たいのじゃ」
泣き真似をしてみたが、そんなこと姉にはまるで通用しない。
「それで?何かあるのか?」
「うむ、慶一郎の奴がわしに供えたものじゃ」
そう言って朔は人の世界から持ってきたクッキーを姉に差し出す。
「慶一郎が作ったものじゃぞ!仲良きものと食えとあれは言ったが、姉上にやろう」
「……なぜ私に?」
いぶかしがる姉に朔は人のように素直な心でその真意を伝える。
「姉上は慶一郎の作ったものをまた口にしたいと申したのであろう。それゆえじゃ。今の姉上では外出もままならぬであろうしな」
姉は差し出された菓子をしばらく見つめた後、無表情なまま目をそらした。
「人の世界の食べ物など口にしては穢れる」
「むぅ、姉上とて一度は口にしたではないか」
「それは人の世界での話。……あれはあの場所を助けるに値するか、会議にかけるために訪れた場所である。それだけの話だ」
「しかし、姉上は再びと……」
「あの者のやる気を出させるための戯言に過ぎない……」
最初のコメントを投稿しよう!