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騎士のプライド、道化のプライド2
数十分後、買い出しと使いから帰ってきたルイドバードは、何やら蒼い顔をしていた。「人々が劇場の事を噂していた」
「まあ、そうでしょうねえ。あれだけ大騒ぎしたら」
今までの疲れで眠いのに、傷の痛みとうつぶせになりっぱなしの姿勢で眠れないラティラスは張りのない口調で言った。
「そうではない! カディルが殺されていたらしい」
「へ?」
さすがに驚いて、枕に埋めていた顔をあげる。
「確かに針は刺しましたが、あれはハッタリの大嘘ですよ。毒なんて塗ってません!」
「だから、毒で死んではいない! 斬られて死んでいたそうだ。おそらくはどさくさに紛れて口を封じられたのだろう。観客に紛れていたケラス・オルニスに」
「あるいは裏切り者の治安部隊の誰かに」
起き上がったラティラスに、ルイドバードは買ってきた服と取ってきたラティラスの荷物を放り投げた。
「それから、ラドレイの家が燃えたようだ」
「え……」
「家族全員、それから使用人も焼け死んだ」
ラティラスの脳裏にレーネウスの無邪気な笑みが浮かんだ。
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