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幸せの終わり
ラティラスが許しを得て部屋に入ると、リティシア姫は窓辺に置かれたイスに腰掛け、外を眺めていた。
「これはこれは、お美しい! 花嫁衣裳もよくお似合いで!」
心の底からラティラスはそう言った。
丘の上に建つ城の大きな窓からは、街の様子がミニチュアのようによく見下ろせる。街は、婚礼を祝う旗と飾りで彩られていた。普段は料理屋の中に収まっているテーブルやイスが道にまではみだし、その間を人々が行きかっている。きっと酒場や食堂では、とっておきの酒樽や肉が取り出され、これから開かれる祝宴の準備が進められているのだろう。窓を開ければ軽快な音楽がここまで小さく聞こえてくるかも知れない。
その傍に座るリティシアは、今までのどんなパーティーでもないほど着飾っていた。
体の輪郭に沿った婚礼衣裳には、基の生地の色が分からぬほど色とりどりの絹糸で花や小鳥が刺繍されていた。伝統的な衣装にふさわしく、その刺繍のどれもがこのロアーディアルの国で見られるものだった。
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