二、邑長の娘と邑人

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 その後も、ユクリはお供を従えては山を下りる機会がしばしばありました。  それは物見遊山(ものみゆさん)であったり社への参拝であったり、はたまた隣の邑へ訪問するための移動であったりと、理由は様々でした。  そんな折りに、ユクリが馬方(うまかた)の仕事をするエニシを目にする機会は何度かありました。  しかし二人は、会話をする事も、ましてや遊ぶ事など到底叶うわけもなく──。  ただ(いたずら)に、時は過ぎていくばかりでした。  ユクリの婚礼話が持ち上がったのは、祭りからさらに二年後のことでした。
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