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一、ユクリとエニシ
むかしむかしある所に、大きな山のそびえ立つのどかな邑がありました。
その邑の長は山城のような館に住み、山の麓に住む邑人たちを見守り、治めています。
邑長の庇護の下で暮らす平民たちは、邑長の一族を頂点とし、強く崇めていました。
邑長には一人娘がいました。
名は、ユクリといいます。
ユクリは邑長の娘という自分の立場を鼻にかけたりせず、山の麓に下りてきては平民の子と同じように学問所に通い、じゃじゃ馬のように野山を駆け回る活発で飾り気のない娘でした。
館の女中や召使いには手を焼かせるユクリでしたが、そんなユクリに誰も不満を漏らさず、邑人からも大変慕われていました。
平民の少年・エニシは、そんなユクリの遊び友達の一人でした。
物怖じしない性格のエニシは、身分の差など関係なく、いつもユクリと対等に遊んでいます。
不思議と馬が合ったのか、ユクリにとってもエニシは一番に仲のいい友達でした。
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