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当たり前だが弾は全く目にとまらぬ速さで、誰かが何かを考える隙も与えない内に、男の煙草を持っていた方の腕、それも二の腕の辺りへ埋まっていったらしかった。 僕はその時のことを思い出すといつも、煙草が男の指から離れ、地面に落下するまでの映像がやけにスローになって頭の中に現れた。ばらばらっと離れた手の指、そして吸いかけの煙草が、白い床へ向かって吸い込まれていくわけだが、その様子にはどこかしら決意のような物が感じられた。そして床へ、着地、細かい灰が、何か申し訳なさそうに飛び散った。わずかに。スロー・モーション。     
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