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確か朝、開店後すぐだったと僕は記憶している、強盗は正面の自動ドアから突然入ってきた。突然だった。まあ、強盗の出現というのは大体の場合において予測はしにくいものなのでその辺りはいいのだが、その光景も今思えば、駆け出しの映画監督が売れない俳優、女優を集め、「ちょっと映画撮りたいから、頼むわ」と知人、親戚にエキストラ役をお願いして撮影した低予算シーン、みたいな感じで滑稽なのだが、その場に居合わせた全員にとって強盗の出現は予期せぬものであり、細部までは覚えていないが世間の給料日だったのか客の数は多く、言うまでもなく人々は大混乱に陥った。素人エキストラにしては皆、良い仕事をしていた。 エキストラは良かったが、強盗が大根というか、茶色のニット帽にサングラスにマスク、というB級感で、まあ元々が地方の低予算映画なのでそれはいいのだが、第一声が「全員、殺したる」とか何とかで、横暴で品が無く、威厳に欠けた。素人ドッキリとか言った名目でいかにもヤラセ、ということが見え見えの茶番を見させられている時のような感じで、興醒めした。     
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