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A市の中で、優秀な生徒を数多く輩出した私立青嵐(せいらん)学院。
山道を幾らか進んだその先に建つ其所は、何処か市街とは違う雰囲気を纏っているような、そんな面影が有る。
勿論、そんな物はまやかしの類いかもしれないし、人によっては単純に山の中なのだから違って当然だ、という意見すら有るのだろう。
入学式を終え、早一ヶ月。
何となく感じたその雰囲気と、一番近場で、尚且つ親が納得するような高校がここしか無かったという理由で、受験を受けた。
「…。」
そんな彼女、神成月子(かんなるつきこ)は酷く無表情に、窓から見える景色を眺めていた。
月子の家は、比較的裕福な家である。両親は共に、同じ会社の経営者であり、常日頃から忙しそうに各地を回っている。
月子は、いつも独りだった。
幼い頃から両親と過ごす時間が少ない。
ずっと前に、「良い子にしていれば両親ともっと同じ時間を過ごせる」等という戯言を真に受け、その結果がこれだった。
大抵のことは自身で熟す手のかからない子となり、両親はますますお金稼ぎに身を費やした。
何とも皮肉な話である。
そんな日々を過ごしていく内に、彼女は世の中を随分と達観するようになっていった。
所詮、この世界の全てはお金なのだ、と。
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