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〝俺たちあの時、一緒にテレビを見てただろ。ちょうどナルコレプシーやクライン・レビン症候群についての番組をやってて、睡眠障害について勉強するのもいいなって。でも番組を見たら、後半結構スピリチュアルな話をしててさ。どうでもいい正夢やら予知夢やらの分析をしてた。それで俺は憤慨してお前に言ったよな。正夢なんてただの偶然だ、そんな非科学的なこと起こりうるはずがない、俺は絶対に正夢なんか見ない、って〟
知らんがな。
そう思ったが、礼一の目はいたって真剣だった。
「……礼一は将来警視総監になるのが夢らしくてさ。だからあいつ、『俺は将来全日本人の正義を背負う。圧倒的な正義であり続ける。だから俺は、人生で絶対に嘘をつかない』がモットーなんだって。そんな中、昨日夢を見たみたい。礼一が私をお昼に誘って、断られる夢」
「えー、それが正夢になったら『俺は絶対に正夢なんか見ない』が嘘ついたことになっちゃうから、わざわざ由佳にお昼一緒に食べるの誘って承諾させたわけ? ヤバー。変態」
私も意味が分からない。夢で見たことなんて無視すれば正夢になんかならないのに、何故わざわざ見た夢に対して真っ向勝負を挑むのか。
でも、意味が分からないからこそ天才なのだろうとも思う。
チャイムが鳴り、現国の先生が教室に入ってきた。
「よーし、授業始めるぞー。今日はまず、毎年恒例の期首テストからだ。お前ら、ちゃんと春休みの間も勉強してきたよなー?」
教室が阿鼻叫喚の声に包まれる中、私は先程暗記したテストの解答を思い出しつつ、ため息をついた。
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