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私はどの大学を受験するかまだ決めていないが、都内最低ランクの大学を選択することになるであろうことは間違いない。
礼一に、恐ろしい程ランクを下げさせてしまうことになる。それは駄目だ。
「何言ってんのよ! あんたは東大でもどこでも受かるでしょ? 警視総監になるべく、ちゃんといい大学に行きなさいよ」
「でも、正夢を実現させるわけにはいかない」
「そんなことどうでもいいわ」
そう言ってみたものの、礼一は表情を変えない。意思は固いようだ。
しかし、私も引き下がるわけにはいかなかった。神童と呼ばれてきた男が今、自分のせいで未来の可能性を狭めようとしているのだ。
私は冷静になると、言葉を選びつつ説得を開始した。
「礼一。嘘をつかない人間なんていないよ」
私は転がっているお弁当箱を拾うと、その場に正座をした。
礼一も胡座をかき、真剣に向き合う。
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