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私は普通で平凡な人生を送ることが夢なのだが、それを邪魔する奴がいる。
幼馴染の松田礼一だ。
こいつは私とは真逆の存在。幼い頃から勉強ができて、周りから神童と呼ばれた男だった。
三歳で漢検一級を取得。五歳で微分積分をマスター。七歳でアラビア語とスワヒリ語とアゼルバイジャン語を習得。父親は警視総監、母親は弁護士というエリート一家だったため、礼一は幼少期から寝る間も惜しんで英才教育を受けてきたのだという。将来は礼一も父親と同じ道を進むのが夢だそうだ。
頭が弱くて落ちこぼれの私とは真逆の天才肌。何をしていても目立ってしまう男。だから、凡人である私とは関わらないでほしい。
だけれど何故か彼が私によく絡んでくるのは、私が彼の家の隣に住む幼馴染であり、幼稚園、小、中、高校と同じ環境で育ってきた故のとっつきやすさからなのだろう。
「遥、おはよ。ごめん、今日のお昼なんだけど私抜きにして」
席に着くと、私は前の席に座る遥に謝った。遥は何かを察したように、ニヤニヤと振り返る。
「りょうかーい。また松田礼一の件?」
「そう。お昼誘われて、今日ちょっと行かなきゃいけなくて」
「ヤバー。クラス違うのにさ、これで誘われんの何回目よ。松田礼一、絶対由佳のこと好きじゃん」
そう言われてげんなりする。
しかし、否定せずに変な噂をたてられるのも癪だ。私は念のため釈明した。
「いや、なんていうか……あいつの行動は、全て自分の夢の実現のため、らしいの」
〝由佳。十三年前の五月二十日、十四時五十一分に話したこと覚えてるだろ?〟
ある日、礼一にふとそう聞かれた。四歳の頃の会話なんて覚えてねーよと思ったが、私は礼一に、何? と返事をした。
すると礼一はとつとつと説明し出した。
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