正夢なんか見ない主義

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  「えー! それで付き合うことにしたの!?」  お昼休みが終わり遥に報告すると、彼女はニヤニヤとしながら叫んだ。  私は礼一と付き合うことにした。  何故なら、私の高校生活は礼一からリークされるテスト用紙にかかっているからだ。遅刻が多い上に頭の弱い私は、日頃から先生に目を付けられている。これ以上成績を落とすとやばい。  うちの学校の校長は、礼一の父親の部下の従兄弟の友達の隣人である。礼一はそのツテで、テスト用紙を秘密裏に入手することくらい造作もないことだった。  というか、この時点でこいつに警視総監を目指す資格は無いと思う。 「抱きしめるのとビンタが対義語なのかよく分かんないけど……でもよかったじゃん。受験勉強が本格化する前に彼氏ができて。つかの間の春を楽しめるよ」 「え、全然嬉しくないんだけど……」 「なんでよー。松田礼一、将来有望じゃん。よく見ると顔もシュッとしてるしさ。ちょっと頭おかしいだけで、めちゃくちゃ頭いいし」  そう言われても複雑な心境だ。私はただ、平和な高校生活を送れれば十分なのに。  ふと、スマートフォンがピロリンと鳴った。礼一からのチャットだ。先程屋上で、しぶしぶ連絡先を交換していた。 『由佳。これからお前を水族館に誘うから、罵倒した後にOKしてくれないか』  こいつ、隙間時間で居眠りし過ぎなんだよ。  そう思いながら、『このウジ虫野郎、了解しました』と返信した。  
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