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彼女との夢での密会は、まるで悪い薬のように僕を侵食していった。 僕の毎日は彼女と会うことが中心となり、現実世界の日常はその付属品でしかなくなった。 一度覚えた快楽は簡単には手放せない。 日を追うごとに現実と夢の境は曖昧になり、少しでも気を緩めれば、自分が今どこに立っているのかも分からなくなってしまうほどだった。 ****** 「ねえ、あっちに綺麗な紫陽花が咲いているの。見に行きましょう?」 不思議な甘い匂いが何処からともなく漂い、僕は彼女に手を引かれるまま歩いていた。 色素の薄い髪がサラサラとなびく。 月の光をまとったその姿はあまりにも美しく、僕はちらちらと垣間見えるほっそりとした頸につい見惚れてしまっていた。 「ほら、ここよ。綺麗でしょう?」 彼女は僕の手をそっと離すとそのまま楽しそうに手を広げくるくると回った。 無邪気な姿は少女そのものである。 「ここは私の秘密の場所なの。でも貴方には教えてあげる。特別よ?」 そう言うと薄い唇の端をあげ、ふふと小さく笑った。
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