第1章

11/11
前へ
/11ページ
次へ
「賭けは禁じ手だろ?俺は、お前の政策をぶち壊すよ」 「どうやって?」 紀一郎の携帯電話を持つ手が少しだけ震えていた。 「俺は、お前の事を昔から良く知っている。お前は俺には勝てないよ」 紀一郎は、それを聞いて激昂する。 「お前、誰に向かって口きいてんだ?言葉を慎めよ!」 「まぁ、そう怒りなさんな。ソウリダイジンさん」 「俺は、俺の考えでお前のクソみたいな政策と政権を改正するよ」 紀一郎は、怒りに震えた声で 「やれるもんなら、やってみろよ。何も出来ないくせに」 順一は、タバコに火をつけながら話を続けた。 「これから、始まるぞ。戦争が」 ニヤニヤと笑いながら、タバコをふかして順一は余裕の表情で自分の爪先の垢を穿っていた。 「俺は、お前と違って忙しいんだ。切るぞ!」 紀一郎は、電話を切って自分の携帯電話を床に向かって叩きつけた。 「アイツ、無職の身分で俺様に好き放題言いやがって」  紀一郎と電話を交わした順一は、不敵な笑みを浮かべながら何かに勝ち誇ったような表情を浮かべていた。 「面白くなるな。これから」  順一は、そう言って冷蔵庫からビールを取り出して旨そうにゴクゴクと一気に飲み干してゲップを吐いた。 「さぁて、三カ月。時間はそれだけだ」  順一はそう呟いて軽く首を左右に振ってもう一本タバコに火をつけた。 「ん?ああ、夢か……」  長い夢から目覚めた順一。携帯電話のカレンダーで今日の日付を確かめようとした。 「2017年3月……」 全てが、夢の世界でのファンタジーだったのだと、順一は、思った。 「結局、イコールゼロ!何も変わっちゃいなかったんだな……」  順一は、静かに微笑んでから、穏やかな気分で、紀一郎に電話をかけた。 「もしもし?」 「あぁ、紀一郎?実はさぁ……」  二人は、順一の見た奇妙な夢を、楽し気にずっと、時間を忘れて、話し続けていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加