第1章

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優秀な学生や会社員、公務員には文部労働省からスペシャルボーナスポイントが与えられ、現金換算一千万円を超える金額も珍しくなかった。社会保険制度は、法改正によって廃止された。「一生現役主義」を政策に掲げていた紀一郎は、年金制度を廃止して体が続く限り働けるだけ働くという思想を打ち出し、老後の保障は、国は一切行わない方針を示した。これらが功を奏して日本は戦後の高度経済成長期の再来とも言われる大変化を遂げ、国民は老若男女問わずして自らの能力を最大限発揮し、努力を重ねて「労働」に精を出すようになっていった。 小学生で年収数千万円。それも珍しくなくなってきていた上にそれに刺激されるかのように「次は、自分が」「負けてられない」と競争心を煽る形となり、日本経済は好循環を続けて更にその勢いを増していく一方だった。 生活保護制度が完全に廃止され、ホームレスや障害者たちにも頑張れば億万長者になれる。との意識を植え付けた。国は、ホームレスや生活保護者、障害者たちに高いレベルの職業訓練を施し、ここでもまたポイント制のレベル分けシステムを駆使して高い技術を習得した人間には、数百万から数千万円の資金をボーナスポイントとして付与し、経済的自立を促すことに成功していた。 格差社会を作っていたのは、かつての日本国の政府であり日本国の法律だと確信していた紀一郎は、全ての人間を同じ土俵で戦わせる事で年齢や性別、障害の有無すら飛び越えて「働く事」への意識を六歳以上の日本国民全員に、植え付けた。 また、ポイント制やレベル分けなどのゲーム性を取り入れることによって多くの国民により分かり易く、楽しく働いてほしい、勉強してほしい、努力してほしいと訴えかけた。 消費税は、完全に廃止され芸能人やスポーツ選手、アイドルや芸術家、作家などの給与形態はポイント制、レベル分けによってテレビなどのメディアで低俗な番組が全く無くなり民放も含めて全ての局は、NHKと変わらないスタイルの番組制作に変化していった。 印税などの権利収入を得て生活していた芸術家や作家は、その費用を全て負担する「自費出版、自作CD」等でのみ活動が許されるようになり、多くの低能な作家や芸術家たちは、自らの才能の驕り高ぶりを一切排除され低所得者になり下がった。
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