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本棚に追加 でも……何故か逃げようという気は起こらなかった。何故か稔はワクワクして、いつの間にか勝手に体が動き出して、全力で彼女へ向かって行ったのだ。
身震いする怖さを感じたのは、ほんの一瞬だった。
自分の脳天に、棒が振り下ろされた瞬間。ただの棒だと分かっていたのに、それを絢爛と光る日本刀のように錯覚し……『斬られる』と思った。
『死ぬ』、本能的にそう感じた瞬間、目を瞑った……。
『キーンコーンカーンコーン』
授業終了のチャイムが鳴り、中間休みになる。結局、授業内容が何一つ頭に入らなかった稔は、教科書とノートを机の中にしまった。
その時、
「おい、稔。ちょっと来いよ」
クラスの一軍、勝(すぐる)、相太(そうた)、豊(ゆたか)のグループが机にやって来た。稔はうんざりする。
「今日は、お前に剣術を伝授してやるよ」
校庭の隅。木の陰へ追いやられた稔を見て、勝はニヤニヤしている。
「伝授……キラーン!」
お調子者の相太と豊は、棒っきれを持って囃し立てた。
いつもの三人。クラスのリーダーの勝とその手下の相太、豊。
三年生になるのに、クラスに『馴染めていない』稔は、いつもこの三人に『いじめられる』。
こいつらが『強い』からいじめられるんじゃない。『馴染めない』自分がリーダーに刃向かうのはクラス内でのタブー……だから、『いじめられる』のだ。

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