でっかくて大きいもの

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 僕は電柱に貼られた一枚の紙を見上げていた。その紙の中にはとても美しい猫がいた。僕は必死に口説く。毛並みの美しさ、瞳の綺麗さ、すらりと伸びた前足、そして毛並みの美しさ。こんなに綺麗で可愛らしい猫はこの近所にはいないはずだ。僕は朝から晩までその電柱の下にいた。途中で二回その場を離れることになったが。それは忌々しい犬のせいだ。なんだって僕があんな犬たちの縄張り争いに巻き込まれないといけないんだ。僕はあんな犬たちみたいに人間に尻尾を振ってご飯をもらうほど落ちぶれてないぞ。 「やい、トム。今日一日何してた?ずっと探してたんだぞ」  後ろからいきなり声をかけられるのは大っ嫌いだ。そしてこんなことをするのは僕の知り合いの中でも一匹しかいない、オレンだ。 「いいかオレン。僕はいきなり後ろから話しかけるなといつも言ってるだろ」  僕にもボス猫としての威厳があるんだから驚いているところを見せるわけにはいかない。僕はこの空き地を中心にして縄張りを持つ猫の中のトップだ。言っちゃなんだが僕は喧嘩が強い。僕はこの爪と肉球一つで、いや二つでこの空き地を手にしたんだ。その気になれば犬にだって勝てる。戦ったことはないけど。 「なぁなぁトム。白猫の噂聞いてるか?」  白猫の噂?僕はそれを聞いてもう一度電柱に貼りつけられた猫の写真を見上げる。まさに、白猫だった。 「それはあの子みたいな?」  オレンも写真を見上げる。そして必死に口説きだす。毛並みがどうとか、前足が何だとか。そして気まずそうに僕の方を見て前足を舐める。 「この子かどうか知らないけど最近見知らぬ白猫がこのあたりのボス猫と喧嘩してるって話だ。まぁこの子じゃないと思う。その白猫はオスらしいから」  僕とオレンは空き地の中で一番草が生えているところに向かった。そこは日中は日当たりがいいし夜はベッドとして最適な草が生えている。僕はこの柔らかい草目当てにこの空き地を取ったと言っても過言ではない。でも今日はそこに先客がいた。ひどく弱っているようだがどうやら隣の空き地のウーロンらしい。僕とウーロンはライバルみたいなものだ。何回喧嘩しても決着がつかない。まぁ次は勝つけど。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!