12人が本棚に入れています
本棚に追加
一日目
夏場だというのに、寒さすら感じるほど味気のない廊下。
僕は教授の後ろについて歩いていた。
「説明した通り、キミには、ある実験体の専属カウンセラーになってもらう」
「はい」
僕と教授が向かっているのは、その実験体が生活している実験室だ。
僕は大学時代に教授にスカウトされ、大学を卒業するとともに、こうして実験体のカウンセラーを務めることとなった。
「実験体と接するうえでの注意事項は、もう頭に入っているね?」
「はい、問題ありません」
辞書ほどもある分厚い冊子。その内容は長い時間をかけて、すべて頭の中に入れてある。
これから会う実験体はそれほど特殊で、扱いに注意しないといけないものだからだ。
「注意事項に書いてある通り、実験体が育ってきた環境は特殊だ。キミが大学4年間で学んだことは全く役に立たないかもしれない。手探りになるだろうが、頑張ってくれたまえ」
「はい、ご期待に応えられるよう、尽力いたします」
「それでいい」
教授に案内されてついたのは、重たい鉄の扉の前。
教授が電子ロックと通常の鍵を開けると、ゆっくり扉が開いた。
扉を開いた先には、白い部屋が広がっていた。
最初のコメントを投稿しよう!