一日目

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「そうですね。僕はそのためにここにきました」 「うん、だから、私が普段から考えていること聞いてくれる?」  彼女は一般的な教育は受けているが、それでもかなりの情報を制限されている。  数学や理科はともかく、国語や社会は彼女の『教育』用に作られた特別製のものだ。  その内容は、一般的な道徳や価値観を彼女に植え付けつつも、彼女自身が自分の置かれている状況に違和感を抱かないようにするもの。  つまりは、人権を無視されても不満を抱かないための教育。  そんな彼女が、何を考え、何を思っているのか。  それは、心理学を学んできた僕にとっては、好奇心が尽きない内容だ。  だが。  彼女は僕が思っているよりずっと、考える力を持っていた。
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