五度目の木の下は

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 高校生になり部活と生徒会活動に忙しいユッキに対し、セイヤは得意なスポーツとは無関係に私と同じ合唱部に入部した。  次第に三人の関係には、偏った距離間が生まれ始めて行った。  それでも、これも一度目の約束の日に私が提案した約束のせいなのだろうか?  それは定かではないが、お互い同士を含め三人とも誰とも付き合うようなことはなかった。  その頃でも三人の関係を大事にしたかった私は、二人を等しく大事にしていたつもりではあった。  その癖、心の中ではどんな時もユッキの傍を一番大切に思っていたし、それに迷うことは一度も無かった。  だから、当然ユッキにはいつも私を一番に見て欲しかったし、誰の目からもあからさまな行動を取ってくれることを望んでいた。  なのにユッキは誰に対しても特別扱いをすることは無く、常に皆と同じ距離感で接していた。むしろ、彼の性格を知っている私には、それを心がけている様にも思えていた。  それが不満だった。私が特別でないことが不満だった。  中学までは放課後や休みの日に3人で会う機会が多かったから、それでも問題は無かった。だけど、高校に入って、特に2年生になってからは学校以外で会える機会が少なくなって、ユッキに取って私はただの同級生でしかないのではないか?そう思うようになっていた。  私は心で叫んでいた。  いつもユッキを見ていたのに。  ユッキしかいないのに。  ユッキが大好きなのに。  苦しさからなのか、腹いせからなのか、多分両方からだと思う。  いつしか私はユッキから遠ざかろうとするようになり、敢えて彼を気にしないことを心がげる様になっていた。もちろん上辺だけだけど・・・。  ユッキは皆から好かれていて、それを大切にする人だから、彼が周囲のその気持ちを裏切ることが出来るはずがないことは、私も分かってはいたはず、なのに・・・。
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