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そんな感情のまま、あっと言う間に時は過ぎていく。私たちの高校生活も最後の年を迎える。
勉強の出来るユッキが地元の国立大学に進学希望なのは分かっていた。同時に、どんなに頑張っても私に無理なことは痛い程分かっていた。
私は、この先ユッキと同じ道を進むのは無理だと諦めた。地元を離れ都心の私立大に進むことに決めたのだ。セイヤもまた同じく都心の大学に進学することを希望していた。
その頃の私は、セイヤの存在でユッキへの気持ちを紛らわそうとしていたと思う。いや、それは嘘で、私はユッキの嫉妬を期待していた。
セイヤは私に最も近い存在だった。私がユッキから距離を取るにつれて、セイヤは益々私に近づいて来た。
それでも、受験と言う建前でセイヤとは、ある程度の距離を保つことは出来ていたと思う。
夏休みのある日の夕方、突然ユッキと進路について話す機会が訪れた。
ユッキが桜の木の下に行くのを、自分の部屋の窓から見かけたのである。
ユッキと二人っきりで話すのは久しぶりの機会であった。
私はユッキが居なくならない様にと急いで近づいた。そして、ずっと出来なかった、小さかった頃の様な楽しい会話がしたかった。
なのに口から出る言葉は、気持ちとは裏腹の言葉ばかりを吐いてしまう。
多分、一緒にいる機会が無かった不満がつい出てしまったのだと思う。
「ユッキだ。めずらしい、こなところに」
「こんなところって・・・」
私の言葉がユッキには意外だったのように見えた。
それが私の心の何処かで、何故か悦となってしまっていた。
そして、私はそのまま冷たい言葉を彼に向け続けてしまう。
本心とは裏腹に・・・。
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