3人が本棚に入れています
本棚に追加
「そっか、そうだよな。仲良くな。
小学生の時のこの日に、桜の木の下で約束しただろ、ユーリンの提案で。
その高校も卒業したんだし、もう俺の前で遠慮することはないんだから」
ユッキは何かに納得したように、そう言って頷くと、寂し気にその場を去って行った。
私は、ユッキを呼び戻そうと思った。喉まで声は出かかった。
なのに出なかった。出せなかった。
セイヤが目に入って言葉を出せなかった。
いや違う。自分の取って来た行動のせいだ。
自分の余計なプライドのせいでセイヤの心を受け入れたせいだ。
私は最後のチャンスと思っていたのに、あっさりと取り返しのつかないことをしてしまった。
そう感じた。
ユッキは、あの約束を守って私に近づこうとはしなかったのだろうか?
もし、そうだとすると、私は、8年も前から取り換えしの付かないことをしたのかもしれない。そう思った。
それはどうであれ、幸運は自業自得の前に会えなく掌から零れ落ちたてしまったのだ。
結局、三度目の約束の日は今までで一番短い立ち話で終わってしまっていた。
その後、どうやって家まで帰ったのか、私は覚えていない。ただ、その時体の力が全部抜け落ちてしまって、立っているのが精一杯だったことだけはハッキリと覚えている。
その時の私は、既にユッキと二人で約束を書き記した、あの”幸運の木”と書かれた木札の存在自体も忘れていた。
最初のコメントを投稿しよう!