五度目の木の下は

19/27
前へ
/27ページ
次へ
 天気が良かったせいで遠目からでも分かってしまい、出鼻と言う私の出過ぎた鼻はその時点で砕かれてしまった。 「やあ、久しぶり。元気にしてた?」  そう言うユッキに。 「うん・・・」  頷くのが精一杯。  私の目はどうしても、ユッキの隣の女性に行ってしまう。どこかユッキに似たところのある綺麗なお姉さんタイプの女性に。  ユッキはそれに気づいているのか、それともいないのか。淡々と話を始めた。 「セイヤは?」 「一緒じゃないから」 「そうなんだ。セイヤ元気にしてる?」 「うん・・・してると思う」  それから何を話したのか上の空でよく覚えてない。だけど、多分他愛もない話だったと思う。でも、その後はセイヤの話を聞かれなかったことだけは覚えている。  今思えば、ユッキが私の様子から察してくれたのかもしれない。    話す言葉が切れたところで、 「ユーリン綺麗になったね。セイヤのお蔭かな?」  二度目にセイヤの名前を口にした。そして、 「じゃあ・・・」  ユッキはそう言って踵を返す。 「うん・・・じゃあ」  私も頷いて、そう返した。 「じゃあ」と言う言葉が、こんなにずしりと心に重く圧し掛かる言葉だと、私は初めて知った。私は圧し潰されそうになって、つい頷いてしまっていた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加