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結局、新しいメアドもSNSも交換できず仕舞いだった。
ユッキの幸運は、結局私には向いていないのだと思わざるを得なかった。
私に都合の良い虫はそこには居ないのだ。そう思った。
私は肩を落として涙を堪えていた。少なくても、ユッキには見られない様に。
しかし、そんな時、私に思いも掛けない言葉が向けられた。
「心配しないで、私は勇気の従姉だから」
終始笑顔を見せるだけで黙っていた女性が、すれ違いざまに私にこう伝えてくれたのだった。
虫がいい話に捕えれば、彼女はユッキのただの付き添いであって、私の様子に気付いて誤解をしない様にと、そう伝えてくれた。そう言うことになる。
私は、そんな微かな幸運に縋った。彼女がくれた幸運の虫に。
その後、私はそのまま東京で職をした。地元に戻ると言う選択肢もあったが、就職先が少ないうえ、恐らくユッキも地元での就職では無いと思ったからだ。
そして、私はあと4年だけ待つことにした。次の約束の日まで。
ユッキの性格は知っている。
あれだけ周りに気を使うユッキだ。彼女の言葉が本当なら、よっぽど女性から積極的に来ない限りは、周囲に気使う彼にそうそう彼女が出来るはずはないのだ。
そんなこと昔から知ってたはずだ。
彼は周りにばかり気づかって自分の事は疎かにするそう言うヤツだったんだ。
私はそんな虫のいい話を自分に言い聞かせた。と同時に4年後の五度目、もしまた桜の木の下でユッキに会えたなら、私はわき目もふらず誰の迷惑も考えず、ユッキのもとに飛び込もう。そう決意した。
幾らユッキが周りを気にしても、私は気にしない。私はユッキだけを見る。そう決意した。
それまでの4年間は、私が自分自身に与える戒めの期間なんだ。そう思うことにした。
それからの私は4年間全てに全力で取り組んだ。もちろん恋愛を覗いて。
そして時の過ぎるのを待った。
積極的過ぎる女性がユッキのもとに現れないことを願って。
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