五度目の木の下は

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 26歳になる年を迎えた。  これがほんとの最後のチャンスなんだ。そう思い、初詣ででは、とにかく私はユッキが来てくれれことだけを願った。  春になり、五度目の約束の日がやって来る。  平日が休みの私は、その日のシフトを無理やり休みにしてもらい前日に帰省することにした。  そして、約束の日当日。  私はまだ来るはずも無い昼前から桜の木の下でユッキを待つ。  天気は今にも雨が降りそうな、そんなどんよりとした曇り空。  でも、雨が降らなかったのは幸運だった。  ところが、1時間くらい待ったお昼を過ぎた間もなくのことである。私のところに仕事のトラブルの電話が掛かって来た。  それは、どうしても行かなければならない内容であった。一生懸命に仕事をしたばかりに、任されていた仕事である。  私が行かなければならない・・・。  私は、不運に泣きそうになってしまう。  頑張り過ぎたこに後悔が襲う。  分かってはいたが、この桜の木はとっくに私にとっての幸運の木では無くなってしまっていたのだ。  それどころか不運の木になってしまったのかもしれない。  私はもう一度、20年前に二人で決め事を書いた、あの幸運の木札を探して見た。  疎かにしていたあの木札をだ。  でも、やはりどこにも見つからない。  当たり前だ、4年前に思いっ切り探して見つからなかったのだから。  再び、大事なものを疎かにしてしまったことへの後悔で落ち込みかける。  でも、今回は違った。この4年間頑張って来た自信と強さが私を立ち直らさせた。  運に縋っている場合じゃない。現実を見なきゃ、そう思った。  トラブルを解決して、少しでも早く戻るのだ。そう思った。
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