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そうだ、彼は絶対に約束を守る人なのだ。
自分から約束を破る人ではないのだ。
ユッキの顔が笑っていた。
急いでいる私を見て笑っている。
何でもいい、笑ってくれていればそれでいい。
「遅くなってごめん。ユッキ、誕生日おめでとう」
それが、私の口から出た第一声だった。
「大丈夫、僕も今来たところだから。ユーリンも誕生日おめでとう」
そう言ってくれた。昔のままの笑顔で。
考えてみれば、初めて二人だけの約束の日である。初めてここで祝う誕生日である。
それから話は弾んだ。20年前の様に。
私は何も隠さなかった。彼の心に飛び込み正直に話した。そして、ひたすら詫びる。
判断はユッキがすることなのだ。
すると、ユッキが4年前の四度目の約束の日のことを詫びて来た。
ユッキは、私がセイヤと二人で来るもの思っていたらしいのだ。それで、お互いが楽しく会えるようにと、従姉に頼んで一緒に来てもらったらしいのだ。
「ごめん、私が悪いの」
私が言うと、
「いや、自分にそう言い聞かせていただけで、心の奥では居場所がなくなるのを恐れていたのだと思う。自分の見栄だったのかもしれない。弱い人間だよ」
ユッキはそう言って、苦笑いをする。
「ユッキはそんなことないよ」
心から私はそう思う。
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