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「いや、そんな人間だよ。幼稚園の時から、小学校の時も中学の時も高校の時もずっとユッキを見ていた。でも周りの目を恐れて、良い顔をしていたくて俺はユッキと仲良く出来なかったのかもしれない。
ユーリンはさ、男の子から凄く人気があったんだよ」
そんなことを言って来る。
「それはそのまま、お返しします」
そう、いつもユッキがクラスで一番人気があったのだ。
自然と笑顔が出てしまう。
「二人で笑い会えたのは何年ぶりだろうね」
「ホントに」
「何年ぶりと言えばさ、覚えてる?
4年ごとに会う約束と、もう一つの約束」
ユッキが言う。
「えっ? あっ!」
そうだ、二つのこと決め事をして、二人で約束をしたのだった。でも、内容を全く覚えていない。
「ごめん」
謝るしかない。
「冷たいなあ、ホントに全然覚えてないの?」
「ごめん」
しまったと思った。ここから、また気まずくなったらどうしよう。そう思った。
「まあ、いいか。そうだと思ったんだ」
そう言って、ユッキが笑う。
「高校3年の時の夏にここで会ったの覚えてる?その時に付け直した木札が確かこの辺に」
そう言って、ユッキはスマホの灯りを頼りに暗闇の中、木札を探し出す。
私の想像とは全く違い、私の手の届かない上の方から。
あれから20年の月日が過ぎたことを感じさせる。
桜の木はこんなに成長したのだ。私たちの背の高さを優に超えて。
私はその木札を受け取り、文字を読もうとするが、殆ど消えて読み取ることが出来ない。
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