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「恥ずかしくて、鉛筆で書いたから殆ど消えてしまったけど。ほら、何文字かはまだ薄らと読めるでしょ」
「えっと、”20年”と、”ずっと”」
その文字だけで、私ははっきりと思い出した。
ユッキは私の表情で、私が思い出したことを知ったようだ。
「もし、まだユーリンが1人身であればだけど」
ユッキはそう言う。
私は声にならなくて頷く。
「次の4年後も、その次も、歩ける間はずっと二人でここの桜を見に来て欲しい」
「もし、私が歩け無くなったら?」
「大丈夫、負んぶ出来るように鍛えて置くから」
私は、ユッキの胸の中にいた。
気付いたら私はユッキの胸で涙を拭っていた。
6歳の時の約束。
そうだ、今日がその20年後なんだ。
私がぶら提げた木札の方は既に無くなっている。
ユッキも落ちていた自分の木札をぶら提げ直した時に、私の木札も探したけど見つからなかったらしい。
でも、ユッキの木札はまだ残っている。
それはこれから果たすことになる約束だ。
”20年後にここで会えたら、それからは、ずっと一緒に居よう”
ユッキは私以上にこの日を大切にしていた。
約束の日を、二人の誕生日を、そして、桜の木の幸運の日を。
私の幸運は私のせいで失ってしまったけど、彼の幸運は今でも私の方を向いていてくれた。
多分20年間変わらずに・・・だと思う。
きっと、最初から彼とはこうなることになっていたような気がする。
これって、傲りだろうか?
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