五度目の木の下は

8/27
前へ
/27ページ
次へ
 セイヤが転校して来てから丸一年、小学5年生になる年の春になる。  桜の木を植えてから4年が経ち、木札に書き記した一度目の約束の日がやって来た。二人の誕生日の日でもある。  その時には、私とユッキの二人で交わした約束は、4年の間に三人の約束に様変わりしていた。  それもごく自然であったように思う。  その日のことは、今でもはっきり覚えている。  桜の花も思っていた以上に沢山咲いて、空は雲一つない快晴。  まだ3月末と言うのに上着の袖を捲る程に暖かかった。そして、なにより心が軽かった。  私とユッキには事前に二人で決めていたことがあった。それは、約束の日に”二人の誕生日会”はしないと言うことである。  もちろん、それは一人だけ誕生日と無関係なセイヤに対して配慮である。提案も、もちろんユッキである。  なので、その日は、三人でごく普通に花見をすることになった。  まだ2メートルちょっとの桜の木の下に敷物を敷いて、持ち寄ったお菓子を食べながらの談笑。他愛もないものだ。  それでも、私には凄く楽しいひと時であった。それ自体は。  しかし、今思うと、そこから私とユッキの間の歯車が狂いだしたような気がする。いや、正確にはその頃に生まれた私の傲りのせいだと思う。  私はクラスの女子に人気のある二人の男の子に挟まれ、優越感もあったし、幼心に有頂天になってもいた。今思うと、殴ってやりたいくらいに。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加