五度目の木の下は

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 私とセイヤを平等に接するユッキに対し、私に対して距離を縮めようとする感がセイヤにはあった。私にはそれが否応なしにも分かってしまっていた。  それは嬉しい反面、ユッキとの距離が遠くなって行くのではないかと言う恐にも繋がっていた。  私の気持ちは4年前からずっとユッキ一人にあった。それはその後もずっと変わらない自信もあった。なのに、私はこの3人の状況を長く続けたい。そう思っていた。  私は二人の気持ちも考えずに、残念ながらそんなことを強く望んでしまっていた。  その結果、私はその時の上気分に乗せて、軽い気持ちで口にしてしまった。 「高校を卒業するまで、3人でこのまま仲良くいようね」  ちょっとした提案くらいの気持ちで。それに、 「何で、高校卒業するまでさあ?」  セイヤの顔はちょっと不満そうに見えた。 「ん~・・・、ほら、その後はみんな大学とかでさ、きっとここを離れるかもしれないから。  でも、高校までは一緒にいられると思うし、仲良く楽しくやりたいもん」  セイヤの不満を早く打ち消さなければと思い、思いつくままに適当なことを並べていた。それをユッキはどう感じたのか、 「そうだね、分かった。僕もそうしたいと思う」  ユッキは私に賛同してくれた。 「じゃあ、俺も」  そうなると、その時の関係では自然とセイヤも同意せざるを得なかった。  その時の私は、それ程強い約束をしたつもりでは無かった。  ただ、巧くいった。私って凄い!やっぱりこの木は、幸運の木なんだ!私の想い通りになる!そんな気持ちであった。  嘘は吐かない、約束は絶対に守る。そんなユッキの性格を知っていたはずなのに。  多分、4年前小枝にぶら提げた”幸運の木”と書かれた木札は、その頃はまだ小枝の下でゆらゆらと揺れていたと思う。
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