召使い

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召使い

 城に帰ると、既に食事が用意されていたのだが、私は食欲を無くし、口をつける事が出来なかった。様子を見に来たメイドの“Oka-asan”は私の皿を覗き、心配そうに私の額に前足を当ててしきりに首を捻っていた。そこへ“Oto-osan”が足音を響かせながら近づき、何やらベラベラ吠えたので、“Oto-osan”の匂いが嫌いな私は、 (それ以上近づかないで欲しいなぁ)と思っていると、何を思ったか、事もあろうに私に抱きついて来た。 (うわっ!こいつ!)  このとき私は匂いに微かに混じる事実に気付いてしまった。“Oto-osan”はどこかの雌と密会している。しかし、こいつは“Oka-asan”と出来ていた筈。人というものは何とも破廉恥な。まあ、犬も大して変わらないが。この二人の行く手に待ち構えている波乱の物語に興味をそそられる。そういうわけで私は食欲が戻りそうになって、深呼吸をすると、また奴の加齢臭を嗅いでしまって食欲を失い、何だか分からないままに車に乗せられある所に着いた。 (信じられない!なんとデビッドがあちこちに伝言を残してるじゃないか!) 車を降りるといくつもの伝言柱にデビッドの名前があったのだ。“Oto-osan”に抱かれているので読むのに苦労するが、 [デビッド/呟き] 2017/05/11,14:25~ 《あんのやろー、絶対ぶっころーす》 《何だここ、あ!俺ここ嫌い!マジ?ちょっと“Papa”ここだけはやめてよ、お願いだからさー、注~射、嫌ぁい!》 《あの全身白い“Sense-e”の野郎、生まれ変わったらゼッテー、注~射し返してやる》 (え?ここ、注射すんの?イヤんやめてん!)  私は注射が怖くなって、リードがつけられていなかったのを良い事に、“Oto-osan”の腕から飛び下りて逃げた。そして駐車場から道路へ出ようと思った瞬間、何故か世界がスローモーションになる。
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