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「そう光の聖女様が囁くと、なんとその場にいた幾つかの村人が、とても醜い姿に変わったのでした。彼らは魔物だったのです」
読み聞かせる保育士が絵本のページをめくる。
うららかな陽気の中、開け放たれた教室の窓からは、涼しげな風が静かに室内に潜り込んでくる。昼食後、普段なら眠気に誘われるままになる幼児たちは、しかし今日だけは目を爛々と輝かし、物語の展開に心踊らせていた。
「神父様はこう言いました。『これはなんということだろう。ああ、光の聖女よ。私が間違えていた。神は常に正しかったのだ』と。しかし、光の聖女様は神父様を責めませんでした。『人は過ちをおかすものです。それは私も同じ。しかし大切なことはその過ちを認め、悔い改めることなのです。我らが主はきっと貴方をお許しになることでしょう』」
ああ、光の聖女はなんと心が広いのだろう。そんな言葉は浮かばないまでも、幼児たちの心にはそれと同等の印象が刻まれた。
そして物語はついに佳境に迫った。
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